当院では2023年1月より不整脈専門外来を開設いたしました。 

高齢化社会が進む中心臓疾患の有病率が増加し、それらの治療の重要性が高まっております。
その中でも不整脈治療が注目されております。

不整脈とは 心臓の脈拍が突然早くなったり(頻脈)、遅くなったり(徐脈)、乱れたりする(不規則)疾患です。
動悸(心臓がどきどき)を感じたり、動くと息切れがしたり、胸の違和感を感じたり、立ちくらみやめまいがしたり、失神をしたりというような症状を呈することがありますが、中には無症状で健康診断で初めて指摘されたり、血圧測定時に気が付いたりすることもあります。
放置すると心臓の機能が低下してしまい、全身がむくむ、息切れが強くなる といった心不全の状態になってしまいます。

当院では、問診、2誘導心電図、ホルター心電図、心臓超音波検査などから的確な診断をつけることを重要視しております。そして不整脈の原因究明を行い、各々に最適な治療法を決定していきます。
頻脈性不整脈に対しては、内服治療、さらには不整脈の原因部位に熱を加えたり、冷凍凝固させたりすることにより根治させる経皮的心筋焼灼術(カテーテルアブレーション治療)を必要に応じて行います。
徐脈性不整脈に対しては、症状を有するような場合は、主に永久型ペースメーカー移植術を行います。

正常心拍数(60-90回/分)以上の心拍数(100回/分以上)が持続する状態です。
代表的な不整脈には頻脈性心房細動、心房粗動、心房頻拍、発作性上室性頻拍があります。
致死性不整脈と言われる心室頻拍/心室細動もあります。

<心房細動>

心房細動は高齢化とともに増加傾向にある不整脈で、現在約100万人が罹患していると言われております。
脈が速くなったり、不規則になったりすることで動悸やふらつき・胸部違和感などの症状を呈するようになります。
一方で約6割の人が無症状で経過するともいわれております。心房細動を放置すると浮腫、息切れといった心不全症状を呈するようになります。また脳梗塞の原因にもなり得る不整脈でひとたび脳梗塞を発症すると大きな後遺症を残すことが多いです。

脈拍管理(心拍数の調節、正常の脈への復帰)としての内服加療と、脳梗塞予防としての抗凝固薬の内服加に加え、近年はカテーテルアブレーション治療の有効性が高まってきております。
当院では必要に応じてカテーテルアブレーション治療を行い、心不全の予防・脳梗塞の予防を図り、さらには不必要な内服を中止できるように務めさせていただきます。

<心房頻脈・発作性上室性頻脈>

心臓には刺激伝導系(洞結節-心房筋-房室結節-His束-右脚/左脚-心室筋)があります。ここから出る刺激によって1分間に約60-90回の規則正しい心臓の動きが成立します。
心房頻拍や発作性上室頻拍という不整脈は心臓の心房筋に異常な興奮部位が生じたり、異常な刺激の伝導路が生じたりすることで、1分間に約100-200回の頻脈となります。動悸やめまいの症状を呈することがあります。

不整脈発作を停止させるために、薬剤投与、必要に応じて電気的除細動(電気ショック)を行います。
また不整脈発作を予防するために内服加療や電気生理学的検査及びカテーテルアブレーション治療を行います。カテーテルアブレーション治療が非常に有効な不整脈です。

正常心拍数(50-90回/分)以下の心拍数(50回/分未満)が持続する状態です。
代表的な不整脈には洞不全症候群、房室ブロック、徐脈性心房細動があります。

<洞不全症候群・房室ブロック>

心臓刺激伝導系の洞結節や房室結節に異常が生じることで 1分間に20-40回の心拍数(徐脈)になり、めまい、息切れ、失神などの症状を呈することが多いです。放置するとむくみや呼吸困難といった心不全状態になることもあります。

薬剤が原因のもの、電解質異常が原因のものであれば薬剤を中止したり、電解質の補正を行ったりすることで治療が可能です。
しかしながら加齢に伴うものであればペースメーカーの植込術が必要となります。

心房細動へのカテーテルアブレーション治療では3Dマッピングシステム(EnsiteXシステム)を使用し、患者様の被爆を最小限に抑え、より安全で確実に心房細動の起源/基質を治療することができます。
また患者様の苦痛軽減と手術安全性の担保のため、全身麻酔による手術も積極的に行っております。(下図参照)

肺静脈隔離術
肺静脈隔離術

他の頻脈性不整脈へのカテーテルアブレーション治療では電気生理学的検査にて正確な診断をつけ、必要に応じて3Dマッピングシステム(EnsiteXシステム)を使用し、安全で確実に不整脈の起源を治療することができます。(下図参照)

左前胸部の鎖骨より尾側(下側)の皮下(筋膜上)にペースメーカー本体を植え込みます。鎖骨下静脈経由で心房筋と心室筋にリードを2本留置します。リードとジェネレーターを接続することで、徐脈になった際ペースメーカーから適正な心拍数で心臓を刺激することができるようになります。
手術は局所麻酔で行うことができます。

約1週間の入院ですが、退院後は半年-1年毎にペースメーカーのチェックを行います。本体の電池は10年前後の寿命です。電池残量が残り少なくなってきた場合は本体のみを取り換える手術を行うことも可能です。