当院では、下肢静脈瘤の診療を開始しました。
下肢静脈瘤は、足の表面近くにある静脈が拡張して蛇行し、血管が浮き出たり、足のむくみやだるさ、痛みなどの症状を引き起こす病気です。進行すると、皮膚の色素沈着や潰瘍を形成することもあります。
発症の原因は、静脈内にある逆流防止の「弁」が壊れたり機能不全を起こすことです。弁が正常に働かなくなると、血液が心臓に戻らず、足に滞留して静脈が拡張し、静脈瘤を形成してしまいます。
特に次のような方に多くみられます。
- 長時間立ちっぱなし・座りっぱなしの仕事をしている方
- 妊娠・出産を経験された方(女性ホルモンの影響もあります)
- 加齢により血管の弾力が低下した方
- 家族に下肢静脈瘤の既往がある方(遺伝的要因)
- 肥満の方
【主な症状】
- 足の血管が浮き出る、こぶ状にふくらむ
- 足のむくみや重だるさ、痛み
- 夜間のこむら返り(足のつり)
- 足のかゆみや色素沈着
【診療内容】
- 超音波検査による静脈の状態評価
- 圧迫療法(弾性ストッキング)による症状緩和
- 血管内治療(高周波焼灼術・血管内塞栓術)による根本的な治療
【治療法について】
◆圧迫療法(弾性ストッキング)
弾性ストッキングは、足に適度な圧力をかけることで、静脈の血流を改善し、血液の逆流や滞留を防ぐ治療法です。
症状の軽減や進行予防に有効であり、軽度の下肢静脈瘤や、血管内治療後の再発予防にも使用されます。
医療用に設計された専用のストッキングを、足の状態に合わせて処方します。
- 主な適応:軽症例、妊娠中の症状緩和、治療後のサポート
- 使用方法:医師の指導のもと、日中着用するのが基本です。
◆血管内治療(高周波焼灼術・血管内塞栓術)
血管内治療は、逆流している静脈を閉鎖し、症状の改善と進行予防を目指す根本治療法です。
当院では、症例に応じて次の2つの治療法を選択しています。
- 高周波焼灼術
カテーテル(細い管)を静脈内に挿入し、高周波エネルギーにより血管壁を加熱して閉塞させる方法です。
局所麻酔で行い、身体への負担が少なく、短時間(片脚あたり約30~60分)で完了します。 - 血管内塞栓術
カテーテルから医療用接着剤を静脈内に注入し、血管を閉塞する方法です。
高周波焼灼と異なり、加熱を伴わないため、局所麻酔の量を減らすことができ、術後の違和感が少ないとされます。
いずれも小さな傷口のみで治療可能で、入院(1泊2日)での対応が可能です。
局所麻酔下で行うため身体への負担が少なく、治療後すぐに歩行が可能です。傷口も小さく、1泊2日の短期入院で対応でき、退院後から通常の生活や仕事に復帰することができます。
治療後は一定期間、弾性ストッキングの着用をお願いしています。
【診療・治療の流れ】
月曜日午後:専門外来にて診察・超音波検査を実施し、治療方針を決定します。
(外来担当医:循環器内科 栗田康寿)
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木曜日午後:血管内治療(高周波焼灼術または血管内塞栓術)を行います。
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金曜日午前:経過観察後、問題がなければ退院となります。
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退院後:術後1週間、1か月に当院外来で経過を診させていただきます。
(※以降は要相談です)